ミステリー初心者の感想

ミステリー初心者です。主にミステリー小説の感想を書き留めていきます。

扉は閉ざされたまま 著:石持浅海 感想

倒徐ミステリーに現れた恐るべき探偵碓氷優佳の1作目

本日は「扉は閉ざされたまま」の感想を書いていきます。

この作品は2006年版「このミステリーがすごい!」「本格ミステリベスト10」第2位に選ばれています。ちなみにこの時の1位はともに東野圭吾の「容疑者Xの献身」が選ばれており、1,2位と倒徐形式の作品となっています。

 目次

 内容紹介

大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。“あそこなら完璧な密室をつくることができる…”伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった…。

https://www.amazon.co.jp/扉は閉ざされたまま-祥伝社文庫-石持-浅海/dp/4396334060

 感想(ネタバレを含みます)

 7人の男女が洋館に同窓会として集まります。そこで、伏見亮輔が新山を事故死に見せかけて溺死させ、新山の客室を密室にするところから物語は始まります。その後、時間は巻き戻り、新山死亡前の洋館での同窓会の集まりから犯人役伏見の一人称で話が進んでいく倒徐形式のミステリーです。

 一方、今回の7人の中の最年少である碓氷優佳が探偵役となります。フーダニット、ハウダニットを倒徐という形で読者に開示する一方で、物語内では扉が閉ざされていることで事件すら発覚していません。その中で、優佳がなぜ扉が閉ざされているのか?という些細な点から次々と推理を重ねていく様は綺麗です。

 また、普通の探偵役、警察だと事件が発覚して半ば強引に周りを巻き込みつつ事件解決にあたっていくところですが、今回の優佳は決して強引一辺倒ではなく、他の人物の会話を利用して話の軌道を自分の考えのほうに自然に向けさせたりと場をコントロールしていきます。この行動に作中で冷静で冷たい女と評されていたのが前面に表れています。これが、犯人側から書かれているため優佳本人の思考が全く見えず、優佳への怖さが非常に伝わってきます。このような魅力は倒徐形式が故だと強く感じました。

 さらに、優佳の発言や推理の魅力と同時に今回の作品の魅力としては、優佳が新山が密室にした合理性、理由を考えている一方、伏見が事故死に見せかけたはずの状況でなぜ密室にする必要にあったのか?と洋館の状況を活かして、物理的に密室を作り、心理的にその密室を開けられないようにしている点だと感じます。

 これにより、会話劇が進んでいきタイトル通り扉が閉ざされたまま話が進むという他のミステリーでは見られない特異な状況を生み出せており素晴らしいです。

 少々気になったのは、伏見が時間をさんざん気にしていて、窓について想定したはずなのにカーテンを閉め忘れるというのが、伏見のその後の殺人後の冷静な言動からはお粗末なミスと感じたくらいです。

 フー、ハウダニットが明かされているので、読者が推理することは少ないですが、倒徐形式が故の、探偵優佳の場のコントロールに怖さを感じたり、少なすぎる情報からの優佳の推理劇、終盤からラストの優佳と伏見の会話、ストーリー展開は続編も気になる展開です*。倒徐ミステリー未読の方も倒徐ミステリー好き(古畑任三郎とか)の方どちらも楽しめる点満載の作品となっています。

*18/7/29時続編が4作出ております。

個人的評価

石持浅海読了1作目

文庫版読了18/4/13

★★★★★★★☆☆☆ 7/10