ミステリー初心者の感想

ミステリー初心者です。主にミステリー小説の感想を書き留めていきます。

牧師館の殺人 著:アガサクリスティ 感想

名探偵ミスマープル長編初登場作品

 本日は「牧師館の殺人」の感想を書いていきます。

 アガサクリスティ といえば最も有名な名探偵の1人エルキュールポアロの生みの親ですが、今回はもう1人の代表的な名探偵ミスマープル初登場作品となります。

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 目次

 

作品紹介

嫌われ者の老退役大佐が殺された。しかも現場が村の牧師館の書斎だったから、ふだんは静かなセント・メアリ・ミード村は大騒ぎ。やがて若い画家が自首し、誰もが事件は解決と思った……だが、鋭い観察力と深い洞察力を持った老婦人、ミス・マープルだけは別だった!

https://www.amazon.co.jp/牧師館の殺人(クリスティー文庫)-アガサ・クリスティー/dp/4151310355

感想

 舞台はイギリスの田舎のセント・メアリ・ミード村です。その村での牧師クレメント視点で牧師館でクレメントを待っていた際に殺されたプロザロー大佐の事件を追っていきます。

 

 探偵は牧師館の裏手に住む老婦人ミスマープルです。マープルとクレメントは常に一緒に行動してる訳ではないので作品への登場時間は探偵にしては決して多くはないです。しかし、初登場時の男女の恋仲の関係性を言い当てる所など、登場する度に村で見た驚異的な観察眼に事件に関する的確なアドバイスや推理が披露されていきます。このポイントポイントの登場には次は何を発言するのだろうとワクワクさせられました。

 

 作品全体の特徴として、田舎の村ということから登場人物の家も近く、それに応じて各人物が見聞きした事がすぐ神父であるクレメントに伝わってきます。ですので、時代的に監視カメラなどがなく各人物の発言からそれぞれのアリバイなどがわかり事件前後の謎や枠組みが段々と構成されていきます。

 

 事件のプロットの大半が人物の証言で作られるので、作品でも多くの人物とクレメントの会話劇が展開されます。その会話はクレメントが決して探偵ではなく村の信頼できる神父として行われる事が多いので、淡々と事件の事実報告が行われるのではなく、事件と関係ない事や他の人物への悪意などが交わっている会話となっています。人物も噂好きの婦人や態度の悪いメイドなど一癖も二癖もあるのでその会話だけでも楽しめる作品になっているなと感じました。

 

 事件の真相とそれにいきつくマープルの推理に関しては「人間」が行うものという事が意識の根底にあると感じます。決してトリックのための殺人事件や意外な犯人だけを狙ったものではなく小説の中に人間を描き、その中の人物が利益のために無理のない方法で事件を起こすということが行われているなと感じました。それを感じたマープルのある発言が印象的でした。

小説では、いちばん怪しくない人物がきまって犯人だということは知っています。でも、現実生活では、その法則があてはまった試しがありません。たいていの場合、明らかなことが真実なのです。(P409)

 

 マープルの推理は合理的ですが唯一性があるものではありません。(他の人物の犯行可能性を除去できてはいない)ただし、作品をリアルな世界とみて犯行を犯す理由などから犯人、方法を縛り上げていくのは現実世界ならあまりに当たり前のことです。ですが、私はこの様な作品をあまり見ていなかったのでこの様な推理、探偵もまた違った魅力があるなと感じました。

 

 人物たちの軽妙な会話劇やミスマープルの人間観察や人間の性質に基づいた合理的な推理などリアルな推理小説は昔の作品でも色あせることはありません。名探偵ミスマープルの続編も楽しみです。

 

個人的評価

アガサクリスティ 読了5作目

読了日 18/8/12

★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

 

 

以下ネタバレ多めです

 

感想(ネタバレ多め)

6章までの情報メモ 

18時15分 プロブサー大佐が牧師館に到着。

〜18時35分 大佐殺される 銃で頭撃ち抜かれる。(医者の証言)

18時45分 ローレンスが牧師館到着。

18時48分 クレメントが玄関でローレンスと会う。その後死体発見。

状況 大佐は机に向かって死亡。時計は18時22分でストップ。(普段から時計は15分進んでいる)机には18時20分と書かれた牧師宛の手紙。

 

10章までのメモ

ミスマープルの証言

18時16.7分 大佐婦人アンが裏の小道から牧師館へ。牧師館を除いた後アトリエへ。

その後、ローレンスがアトリエへ。10分後2人がアトリエから出て、小道から牧師館を出る。その時ストーン博士、クラムと会う。

この内のどこかで森から銃声聞こえる。アン、ローレンス、メイドメアリも聞いている。

13章

18時30分前にリドリー夫人が謎の電話を受け取る。その後銃声。

25章

18時前にレストレンジが魚屋尋ねる。牧師館内で男性のくしゃみが聞こえる?

森でピクリン酸の痕跡発見。

18時〜19時 レストレンジ夫人が医者を訪ねる。(医者の証言)

などが挙げられます。(見返しながらなので抜けてる証言はあります)

 

 この様な事実から銃声の問題がネックとなり、牧師を森で殺して運んだものとしか考えられませんでした。(といってもそんな事があり得るのか?と自分自身半信半疑でしたが)そのせいか見事に騙されました。

 

 銃声はサイレンサーを使っていたという単純なものだったんですね…ローレンスが初めに誰かを庇う前提の見え見えの嘘の自首をした際に、サイレンサーは使っていないという発言からその存在に全く行き当たりませんでした。と同時にサイレンサー使ったのかとちょっと最大の疑問の真相がスカされた様な感じで少々がっかりもしました。

 

また、マープルの推理の糸口がローレンスがマープルにロック・ガーデンにふさわしくない石を持ってきた事でピンときた!という発言あったのですが、これは読者には推理を平等に与える気は無いのだなと感じました。

 

 ですが、事件は終わってみれば非常にシンプルなものでしたが、このシンプルなトリックを噂好きの多い田舎という舞台を使うことで複雑に見せる手腕にアガサクリスティ の凄さを感じました。